平成16年1月 2004.1

1月31日(土)

あぁ爆弾

【21049】

 阿佐ケ谷ラピュタのオーナーS氏から「今やってる岡本喜八監督で伊藤雄之助が主演している「あぁ爆弾」すっごくいいから来てよ」の、お誘いに載って劇場まで足を運んだ。 ミニシアター・ラピュタは、最近、上映前のBGMにジョン・コルトレーンを流している。T氏曰く「上映作品とマッチングしないことがあってまいるのよ」の言葉を思い出した。これから見る伊藤雄之助の顔が演じる喜劇映画を観るのかと思うと、たしかに、コルトレーンのバラードではあるが、ジャズファンとしては、さてこれは如何かと思ってしまう。館員の「携帯・・・喫煙なんやらかんやらの注意事項を拝聴・・・それでは上映いたします。ずずずぅ〜てな感じでスクリーンがワイドになると、さぁいよいよ開幕である。
いきなり現れた容貌魁偉な伊藤雄之助の大アップ。そこは板張りの獄舎。囚人である伊藤雄之助が憲法を謡曲で舞謡いながらの冒頭のシーンに、あらぁ〜となにやら頭に閃いた。スクリーンでは、獄舎の片隅に座る砂塚秀夫が太郎冠者よろしく立ち上がった瞬間・・・あれれれっこの映画・・・昔観たことがあるヤツじゃないか。あぁ〜〜あである。
せっかくなのだからと最後まで観て帰ってきたが・・・人間の記憶などというものは如何に断片化されているかということが、再確認。「あぁ爆弾」は、結構面白かったのだ。


1月30日(金)

コバちゃんへ!

【21049】

 昨夜のことである。何時になく早い時間から賑わいをみせていた酒亭であるが、上手くしたもので後半には新客の姿を見ることが無く午前零時には誰もいなくなってしまった。退屈しのぎに読みかけの矢作俊彦著「ららら科学の子」に没入。そこへ常連でおすぎに似たコバちゃんがニッコニコしながら現れた。こういう時のこの男は腹に一物なのである。小脇に抱えたバケットの一切れを土産だと渡しながらの開口一番「阿佐ケ谷不届記の日記を今日始めて見たよ・・・うっふっふ外人税かぁ〜〜うふつ!」と来た。来た来た!
ははぁ〜ん、そうか日記に書いた相撲の話だなとピンときた。へへんこの男のいうことは他愛がない。外人勢と書いたつもりが書きっぱなしの悪い癖で、勢が税への誤字なのだ。「コバちゃんそんなことより木田崇師から木田崇師に訂正の方がおかしかないかぁ〜」「そうだ朝日の朝刊が鞄に入っていたっけ、どれどれぇ〜」と眼鏡をかけ直して確認作業。「うぅ〜ん分からないなぁ〜おかしいぃ〜〜ちょっと天眼鏡かしてみて・・・おっと違ってますね!師が帥になってますねぇ〜これは老眼の人には分からないねっ」と満足げ。
と言うことで昨夜の日記の答えは、ベテラン編集者コバちゃんによって解明されたのだった。この男、本当にたわいもない細かいことに全勢力を傾ける。この性格じゃぁ千載一遇のビッッグチャンスさえ見逃してしまうだろうなぁ〜。まぁ〜お人好しの典型、成り上がりには縁がないタイプ・・・金にも縁がないだろう・・・なぁぁ〜〜〜コバちゃん!

1月29日(木)

「腑に落ち」そして一の谷

【21048】

 今朝の朝日新聞スポーツ欄の小さなコラムを何度も読み返したが理解不能。決して難解なことではないのに。気になってまた、誌面を開いて再読したが、やはりダメだった。
それは、今年十両に昇進した一の谷(外人勢に圧倒される時代に、いかにも日本人的ないい名である)というお相撲さんの紹介。小さな囲み記事でコツコツ腐らずとか足踏みという我慢の字が躍っているので、読んでみたがとりたてて感動するではなく、大した内容ではなかったのだが、この後の▼一の谷の本名を訂正 日本相撲協会は28日、新十両の重桜を改め一の谷の本名を木田崇師から木田崇師に訂正すると発表した。これだけの文章なのだが、変である木田崇師から木田崇師・・・ふざけるなぁ〜〜!だろう・・・???

1月26日(月)

「半落ち」そして新宿

【21045】

 もはや四半世紀前になるであろうか、旺文社文庫というものが存在していた時代があった。過去形である。永く生きてると己が生きた分量分だけ過去形で語ることが多くなる。話はちょいと変わるが本日、新宿歌舞伎町のグランド・オデオンで、旧鈍我楽時代からの旧交を交わす佐々部清監督の第2作になる「半落ち」を、女房和子とともに観賞してきた。映画「半落ち」の正攻法な作品づくりと、切れ目のないテンションに身を任せながらスクリーンに小気味の良い固唾を呑む。劇中映し出される歌舞伎町の場面では、今まさにスクリーンを見つめる観客がいるグランド・オデオンに向かって主人公が歩いてくる。今まさに歌舞伎町のど真ん中、この劇場のスクリーンを観ている観客のひとりであるオレに向かって歩いてくるような、突然妙な錯覚に陥った。・・・あれれこれはまさに、映画館で映画に見入るミア・ファーローの前に、突然スクリーンの中から主人公が声をかける、あれ!スクリーンの中の登場人物と同じ世界にいるという映画館を舞台にした映画、ウディ・アレンの「カイロの紫のバラ」である。そしてスクリーンに映る歌舞伎町の雑踏の人混みに自分が・・・一瞬のことであったが心地がよい経験だった。そしてことのほか彼の映画が与えてくれた正攻法で新鮮な映画造りに乾杯なのである。心地の良い感動を後に劇場から宵闇の歌舞伎町に吐き出されるも、なにやらふたりの足取りは家路に着くでもなく、ネオンと怪しげな人たちで賑わう歌舞伎町の奥へ奥へ・・・。歩を進めながら和子に語りかけた「その昔、永島先生が旺文社文庫に書いた怪人グライダーという本の中でオレも怪人のひとりとして紹介されたろう・・・あの中の一文に「新宿の一不良であった彼が・・・」を、誰がどう間違えたか「矢野は新宿一の不良だった」と吹聴したヤツがいて、しばらく仲間に恐れらてていたことがあったんだ、たしかに新宿はオレのベースキャンプだったけど笑っちゃうよなぁ〜だけどやっぱりこうして雑踏に紛れていると新宿はいいなぁ〜!」。気が付けばそこはゴールデン街。行きつけの店は開店前ということで、ちょいとそこらをひやかしながら、明治通りを渡ると3丁目。路地脇にある和子の知人がやっている店のカウンターに座るやいなやの猛スピードでグラスを空け、2時間ばかりの新宿ハイテンションおしゃべり談義。さぁ〜次ぎ行くかぁ〜と最後のグラスの酒をがばりと飲み干したふたり。ゴールデン街へ戻るとすでに先客で賑わう店の温度も心地よく、ふたりのグラスの上げ下げは「お代わりお代わり」でピッチの早さはオリンピック級。強かに飲んだ新宿・・・気が付けば今日の主人公は誰でもなく、確実に我等ふたりなのであった。
そして、このことさえ何時か昔話として心地よく思い出される日が来ることだろう。いい思い出は・・・永く生きてると己が生きた分量分だけ過去形で語ることが多くなる。

1月19日(月)

ATOM写真倶楽部復活

【21038】

 2年の永きに渡り中断していたATOM写真倶楽部が、旧会員の熱い要望により、今日1月19日に復活を遂げた。新会員の入会もありこれからの活動が楽しみである。

1月15日(木)

詩人・平出隆

【21034】

 その昔、クーパースタウン・ファールズとライジングサンという宿敵の草野球チームが、阿佐ヶ谷を根城して存在していたことを知る人も、今は少ない。
そのファールズは、初代監督で若くして彼岸に旅立ってしまった詩人山口哲夫氏から、氏の同胞である詩人平出隆氏にバトンタッチされた。やがてこのチームは監督平出隆氏の直向きなまでの草野球精神論がチームに浸透し、いま現在も年間数十試合というスケジュールをものしながら、名誉監督に長嶋茂雄をいただき、詩人稲川方人、ねじめ正一氏などを擁する、プロ草野球チームという肩書き掲げる素晴らしい球団として、しっかと大地に根を下ろし続けけている。
その精神は平出氏の著書『
白球礼讃 ベースボールよ永遠に』で知る。一方のライジングサンは残念ながら、メンバーの散逸によりやむなく解散してしまった。が、その志を現在の吐夢の店長和子の発案にて12前に、ライジングサンの残党数名と旧鈍我楽の常連を中心に、名前も新たにライジングサン・ホーボーズとなり、年長の俺を監督として再興した。現在はデザインも素晴らしく精悍な黒白のユニホームを装着し週3回ほどのフィールドワークに精だし、ファールズとも、宿敵としてフィールドでしのぎを削りあっていて、これからも永遠のライバルとしていて欲しい存在である。もちろん平出隆氏もそうである。
平出氏は、41歳の若さで亡くなったファールズ初代監督山口哲夫氏のオマージュを雑誌「新潮」にて『物いう円盤』というタイトルで掲載した。そのことを報せに平出隆氏が数年ぶりに新潮社の女性編集者を引き連れ、昨夜ひょっこり現れた。久し振りに見た彼の若々しさは、共に遊んだ日々の時代の同士とは思えぬ時間の経過が感じられぬほどで、大学教授であり詩人で文学者にまで大成した奢りなど微塵もない姿には、軽い嫉妬を抱いたほどである。彼と隣り合わせた常連のy子ちゃんなどは「余り若いので教授と呼ばれているのも、あだ名かと思いましたぁ〜〜ちょとわかすぎるぅ〜〜!」と目を丸くする・・・実は俺とたいして年齢差がないのに。その最中、すでに3軒目という梯子酒のせいか、程良く緩んだ軽口の最中「山口を知っている少ない人で、ぼくの友達」と紹介してくれた。
友達かぁ〜嬉しじゃないかと心の中で彼の言葉を反芻しながら、寄ると触ると呑んでは歌っていた山口くんや彼らと過ごした、あの時代が思い出されてきた。
人も心もそして時も移ろいやすい飲み屋のカウンターで、これからも素晴らしい人間関係を続けていける、俺の人生間違いなしと、確信できた一夜だった。
そして、これから彼が著した『物いう円盤』を読むことにしよう。(円盤とは山口哲夫、彼のあだ名なのである)

1月1日(木)

謹賀新年
【21030日】
明けましておめでとうございます

今年も昨年に続いて、当サイトならびに東京あど弁舎各店へのご愛顧賜るようよろしくお願い致します。
去年今年貫く棒のごときもの
毎年忸怩たる覚悟で迎える年の変わり目ですが、虚子が詠む句のように、まさにあっという間の年渡り。
かと思えば元旦も陽が落ち暮れる頃には

門松や 冥土の旅の一里塚めでたくもありめでたくもなし
一休禅師の詠む如く心持ちになり長生きも芸のうち「無事これ名馬」は、まさにいま大評判のハルウララ・・・と心得る平成16年1月1日。